「1495日の初恋」
パタンパタンパタン…
遠くからスリッパの音が近づいてくる。
上原くんは、漫画をお腹に隠して私に言った。
「先生だ。見つかるとマズイ。結、こっち。」
足音を立てないように、静かにそっと立ち上がる。
上原くんは私の腕を掴んで、ソファーの後ろに座るように促す。
そして、隣には上原くんが座る。
壁とソファーの背に挟まれた狭い空間。
私の右側は、上原くんにピッタリくっついている。
ドカンドカンと爆発するような音に聞こえる私の心臓。
ああ、どうしよう。
上原くんに聞こえる。
静まれ静まれと念じても、弾け出さんばかりの心臓が勢いづくだけだ。
パタンパタンパタン…
スリッパの音が、すぐそばで聞こえる。
上原くんは私の頭を掴んで、ぎゅっと下に押した。
頭を下げろってこと?
私は必死で頭を下げた。
上原くんの手は、私の頭の上にある。
ギュッ頭を押さえられて、私の心臓は超高速。
顔も頭も全身が熱くて熱くて、このまま茹で上がるんじゃないかって思うぐらい。
懐中電灯の光が窓に映る。
上原くんは、私の頭に手をのせたまま、自分の方に強く引き寄せた。
全身を上原くんで覆われる。
きっと、私の姿が窓に映らないようにしてくれているんだ。
だけど…
もう、ほんとに無理。
心臓が、爆発する。
ううん、私が爆発しそう。
上原くんの息が、私の頬にあたる。
お願い、ほんとにもう無理です、神様!!
パタンパタンパタ…ン
スリッパの音が遠ざかっていく。
ねえ、もう先生行ったよ。
上原くん、離して…私、もう死んじゃうよ…。