「1495日の初恋」
これは、窓ガラスに写らないようにしてくれてるだけ。
そうなんだけど…
わかってる。
わかってるけど…
完全に抱きしめられている。
すっぽり胸の中。
上原くんの鼓動まで響いてくる距離。
少し早い鼓動。
微動だにしない身体。
「うえ…はら…くん?」
絞り出すように小さく呼んだ。
上原くんの身体が、ピクリと反応する。
「あ…ごめん。」
腕の力が緩んで、身体が自由になる。
上原くんは、ゆっくり身体を離した。
寂しいような、残念なような、離れ難い気持ち。
「俺、もう行くから。」
そう言って、視線を合わさず立ち上がる。
上原くんは、逃げるように部屋に戻っていった。
残された私。
心が揺れて、しばらく動けなかった。
上原くんの温もりが、体中に残っている。
私は、自分で自分を抱きしめた。
なんでかな、涙が止まらない。
心臓をギュッとつかまれたようで、苦しかった。
さっきまで上原くんがいた場所に、手を当て目を閉じた。
好き…
大好き…
だけど、あなたは綾香の彼氏。
好きになってはいけない人。
胸が、ズキンと痛かった。