「1495日の初恋」
その場所が見えてきた。
入口の赤い十字が、胸を苦しくさせる。
受付で場所を聞いて、足早に向かった。
「ここです…。」
宇佐見くんが、ドアをそっと開ける。
独特の匂いに、足がすくむ。
規則正しい機械音。
ベッドに横たわる女性。
繋がれた、たくさんのチューブ。
ベッドの横に、見覚えのある背中。
「…うえ…はらくん…?」
私の声は、思ったより震えていた。
丸まった背中がビクリと小さく跳ねて、ゆっくり振り返る。
「結…?」
私の顔を見て、目を大きく見開いた。
頭を小さく横に振り、ゆっくり立ち上がる。
「上原くん…?」
「…結…ごめん…。」
上原くんは、俯き唇を噛みしめた。
握る拳が震えている。
「結とは…お前とはもう…もう付き合えない…好きでいられなくなった…。」
そう言って、深く深く頭を下げた。
「えっ…?」
あまりに突然な、あまりに残酷な言葉に、頭がついていかない。