「1495日の初恋」
採用されて、真っ先に行った2階の売り場。
…あった…。
あのとき買った万年筆。
懐かしいと手に取った。
上原くん、絵、描いてる?
漫画、上手だったよね。
私の中学の教科書、上原くんの落書きでいっぱいだよ。
あ…ダメだ。
泣かないって決めたのに…。
万年筆を棚にそっと戻して、トイレに駆け込んだ。
初めて出たお給料で、あの万年筆を買った。
同じものを持つことで、繋がっていると思えたから。
漫画も練習してみた。
上原くんみたいに、うまくは描けない。
けれど、描くことは楽しかった。
上原くんなら、どうやって描くんだろう。
上原くんなら、どんな色をつけるだろう。
上原くんのことを考えながら描く絵は、スケッチブックを埋め尽くしていった。
泣く時間はだいぶ減った。
けれど、上原くんのことを忘れることなど、できなかった。