「1495日の初恋」
「上原さん。」
商品を並べていると、後ろから呼びかけられた。
振り向けば、そこにいたのは宇佐見くん。
「ここでバイトしてるって、亜紀から聞きました。」
「そっか…。」
「あのさ、欲しいものがあるんですけど、探してもらえます?」
「はい、何でしょうか?」
ちょっと気取って応えてみる。
宇佐見くんは、ちょっと笑って頭を掻きながら、私に言った。
「消しゴム。」
「消しゴムね、こちらでございます。」
「お願いします。」
宇佐見くんは私のマネをして、わざと丁寧に返事を返す。
お互い目が合って、吹き出してしまった。
売り場まで着くと、宇佐見くんは顎に指を充てて考え始めた。
「どれだろう…。」
「どんな消しゴムを探しているの?」
宇佐見くんは、私の方を向いて言った。
「思い出を消すことができる消しゴム。」