「1495日の初恋」
「このハンカチ、上原さん専用ですね。」
宇佐見くんは、一層笑顔を深くして、私の手にハンカチをのせる。
涙を拭くと、中でカサッと音がした。
不思議に思ってハンカチを広げると、一枚の紙が入っていた。
小さく折り畳まれたそれを広げると、アルファベットと数字の羅列が目に入る。
アドレス…?
顔を上げて宇佐見くんを見ると、うんと頷いた。
「俺のメアド。いつでもどうぞ的な感じです。」
「宇佐見くん…?」
「あ、変な意味でとらないでくださいよ。あくまでも、友達として、ですから。」
宇佐見くんは、いたずらっ子みたいな笑みを浮かべながら、冗談めかして言った。
私は、自然と笑顔になる。
「あ―…その顔!いつもそうやって笑っていてください。」
「えっ?」
泣いていたはずなのに、笑っている自分に驚いた。
ああ…久しぶりに笑った気がする。
作り笑いじゃなく、自然と笑えた。
「じゃ、俺行きます。また明日。」
そう言って、宇佐見くんは店を出ていった。