「1495日の初恋」
「えっ?なに?」
「これ、弾けませんか?」
宇佐見くんは、私の前に楽譜を広げた。
ああこれは、さっき歌っていた曲…。
私は、鍵盤に両手を置いて、一呼吸。
楽譜を読んで、ゆっくりと弾きはじめた。
宇佐見くんは、私の後ろから鍵盤に手を伸ばして、同じように弾きはじめる。
私が身体を斜めにして後ろを振り向くと、うんと頷いて微笑んでくれた。
そして、さっきよりも優しい声で歌い始める。
あたたかな優しい声。
私は鍵盤から手を下ろし、後ろを向いて宇佐見くんを見た。
宇佐見くんは、口角を少し上げて目を伏せた。
手は、私の後ろから伸びている。
私の身体は、宇佐見くんの腕に囲まれていた。
「どうしたの?」
「ん?いや、なんでもありません。」
そう言って、宇佐見くんは鍵盤から手を下ろした。