「1495日の初恋」
上原くんは無口だ。
でも、とても優しい。
何でも器用にこなす上原くん。
勉強は苦手な上原くん。
めんどくさがり屋の上原くん。
体育も音楽も美術も…実技教科は完璧な上原くん。
テストが近づくと、上原くんと私の距離は縮まった。
私がノートを貸してあげていたから。
私は上原くんのために、必死でノートをとった。
上原くんに教えてあげるために、頑張って勉強した。
「ここはね、こうなるんだよ。」
「結、すげーな。ありがと。」
「そんなことないよ。」
謙遜するけど、心の中はとても嬉しくて、思わず顔がにやけてしまう。
今まで自分から進んで勉強なんかしてこなかった私が、すっごいやる気になるから不思議だ。
「俺さ、教科書読むの、めんどくせーの。先生より、結が教えてくれんのが、一番わかりやすい。」
「そ、そうなの?」
「ああ、マジで、感謝してる。」
素直な黒い瞳で見つめられると、胸がドキドキする…。
いつからだろう…
上原くんといると、胸がキュッと苦しくなる。
私の顔、きっと真っ赤だ。
もう、顔をあげられない。
「結?どうした?」
「あ、ううん、何でもない…。」
「お前、顔、真っ赤だぜ?
熱あるんじゃねーの?」
上原くんはスッと近づき、私の顔を覗き込む。
「あ、ちょっと、トイレ…。」
私は、いても立ってもいられなくなって、席を外した。
鏡に映る私の顔。
尋常じゃないくらい、真っ赤だった。