「1495日の初恋」
音楽室の戸締りを終え、校舎の外に出た途端、どしゃ降りの雨。
傘なんてない私は、カバンを頭の上に乗せて走り出そうとした。
「ほんっと、目が離せないですね…。」
後ろから声がして振り向くと、帰ったはずの宇佐見くんだった。
「なんで…?」
「いいからほら、これ使って。」
折り畳み傘を差し出してくれる。
「気をつけて。」
「あ、うん…ありがとう。」
私は、借りた傘をさして歩き出す。
だけど、宇佐見くんは、傘あるのかな…。
やっぱり気になって、後ろを振り向く。
「ねえ、宇佐見くんっ!きゃあっ!」
振り向いた拍子に足を滑らせて、バシャンと派手に転んだ。
少し離れて歩いていた宇佐見くんと目が合った。
顔を手で隠し、肩を揺らして笑っている。
「ほらっ、ったく、しょうがないですね。」
半分笑った顔のまま、私の前に手を出してくれる。