「1495日の初恋」
「あ、ありがとう。」
私は、その手を握って立ち上がる。
宇佐見くんは、私の手を強く握り返した。
「上原さんさ、そんなんじゃ、全然ダメです…いや、ダメなのは俺の方か。」
宇佐見くんは私の足もとに屈んで、泥で汚れたスカートの裾をハンカチで拭いてくれた。
「あ、いいよ、自分でやるから!」
私はあわてて、宇佐見くんの手を止めた。
「…そっか。じゃ、はい、これ、上原さん専用のハンカチ。」
宇佐見くんは立ち上がり、私の手にいつもの黄色いハンカチを載せる。
「じゃ、俺、今度こそ行くから…気を付けて帰ってください。」
「あ、うん…。」
私は、宇佐見くんの後ろ姿を見ながら思った。
もしかして、雨が降っていたから、待っていてくれたのかな…。
いや、そんなわけないか…。
たまたま…だよね。