「1495日の初恋」
強化合宿
「おはよー、結、ちゃんと寝てないでしょ?」
亜紀が、私の顔を覗き込む。
「えっ、ちゃんと寝たよ。」
「…いや、寝てませんね?」
そう言うのは宇佐見くん。
私は苦笑い。
「わかりますよ、そんな顔してりゃ。」
宇佐見くんは、自分の目の下を指しながら言う。
あ、クマか…。
確かになかなか寝付けなかった。
「そうだよね…緊張するもんね…、大丈夫、私がついてるし!」
「お前が一番頼りない。」
「はー?カズさん、今なんておっしゃいました?」
「いえいえ、なんでもありません。」
そう言って、私の方を向いて舌を出す宇佐見くん。
二人がいると心強い。
「まあ、なんとかなりますよ。」
「そうだね、私に任せて!」
亜紀が胸を張った。
「だから、亜紀が一番怪しい。」
「うるさいってば、カズ!」
「…二人とも、ありがとね。うん、頼りにしてます。」
そう言って、小さく頭を下げた。
「楽しい合宿になるといいね。」
「そうですね…。」
「うん。」
この坂を登れば、上原くんの高校まであと少し。