「1495日の初恋」
暗い室内。
椅子に人影。
「こっち。」
宇佐見くんの声がする。
そばに駆け寄って、どうしたのと小声で尋ねる。
宇佐見くんは、腕時計を何度も見ていた。
時間を気にしている?
柱の時計を見れば、あと少しで11時30分。
「上原さん…ごめんね。」
えっ…?
宇佐見くんは、いきなり私を抱きしめた。
「う…宇佐見くん…?」
「ごめん…。」
強く抱きしめられて、なにがなんだかわからない。
どういうこと…?
少しずつ後ろに押されて、身体がテーブルにぶつかった。
「えっ、ちょっ、う、宇佐見くんっ!きゃっ!」
私は、そのテーブルの上に寝かされた。
宇佐見くんが、覆いかぶさるように私を抱きしめる。
「えっ、なに…?宇佐見くんってば!」
腕の中から抜けようともがいてみても、強く抱きしめられて動けない。
ごめんと謝りながら、宇佐見くんは、私を抱きしめつづけた。
時計の針は、ちょうど11時30分を指していた。