「1495日の初恋」
「宇佐見くん…。」
私は、なんて答えてよいかわからなかった。
でも、もしもだとしても、上原くん以外の人を好きになるなんて考えられない。
「…私…私は…。」
「分かってる。もういいよ。」
私の答えをかき消すように響く、宇佐見くんの突き刺すような鋭い声。
「冗談ですよ。そんなに困らないでくださいよ。」
「…冗談…。」
「当たり前でしょ、こんなウソに真剣に悩まないでよ。上原さんは、真面目すぎるんです。」
そう言って、宇佐見くんは笑ったように見えた。
そっか…冗談だよね…びっくりした…。
「さっ、もう部屋に戻りなさいよ。俺もすぐに帰りますから。」
「…うん…でも…。」
私が躊躇していると、「早く行って!」と投げつけるように言葉を放ち、私に背を向け手すりをガンと大きく叩いた。
「頼むから、もう行ってくれよ!」
「う…うん…おやすみ。」
私は急いで非常口のドアを開け、室内に戻った。
宇佐見くんのこと、怒らせてしまったのかな…。
私は立ち止まり、振り返って非常口を見つめた。