「1495日の初恋」
帰りの支度をしていると、亜紀が部屋に戻ってきた。
「練習さぼっちゃった…。」
そう言って、背中を向けて自分の荷物をまとめ始める。
いつもきちんとしている亜紀の髪が、ひどく乱れていた。
「あのさ…。」
顔周りに掛かる髪を指で弄りながら、亜紀が私の方を向いて話しはじめる。
「カズ…大丈夫だから心配しないでいいからね。」
「う…うん。」
「お母さんが、車で迎えに来るって…。」
「…そっか。」
「私も一緒に乗ってけって、カズが言うから…いい…かな…?」
「あ…もちろん…いいよ。」
「うん、ありがと。」
亜紀は、残りの荷物を手早くまとめて立ち上がる。
「それじゃ、先行くね…。」
ドアまで進んで立ち止まり、そのままの姿勢でためらいがちに話しはじめた。
「私、カズと…付き合うから…。」
そう言うと、亜紀はドアを開けて部屋を出ていった。