「1495日の初恋」
想いはどこへ
最後の一冊に手を伸ばすと、上原くんも手を伸ばす。
本の上で重なる手。
ギュッと心臓が跳ね上がる。
「あ、ごめん。」
上原くんが、サッと手を引く。
私は何でもないという風を装い、無言で本を棚に戻した。
何でもない訳がない。
死ぬかと思った。
心臓が破れて飛び出てしまうんじゃないかと思った。
いつの間にか、本を落とした子供は、いなくなっていた。
何を話していいかもわからず、とりあえず立ち上がる。
上原くんもゆっくり立ち上がり、そのまま無言で行ってしまった。
行っちゃった…
なにもできない自分。
上原くんの残像を辿るように、彼が戻した本の背を、指で触ってみる。
声、優しかったな…。
子供、好きなのかな…。
思い出す上原くんの横顔は、どれも優しかった。