「1495日の初恋」
店の壁と、線路を隔てるフェンスの狭い隙間。
上原くんは、壁に寄りかかるように立つ私の顔の両側に、手をついた。
「こっち向いて…。」
そっと顔を上げれば、上原くんの熱を帯びた視線とぶつかった。
「上原…くん?」
こうしていることが苦しくて、逃げ出したくなる。
私は、上原くんと目を合わせていられなくて、下を向く。
「せまいよ…。」
顔の両側、すぐ横に手があるから、向きを変えることもできない。
「それに…近くて…緊張する…。」
私がそう言うと、上原くんは、わざと顔を近づけてくる。
「もう…だから…近いって…。」
息がかかるほど近くに上原くんの顔。
きれいな長い睫の一本一本まで見える距離。