「1495日の初恋」
私は本を抱えて、図書館の中を歩き回った。
もう、中にはいない。
外?
階段を駆け下り、玄関を抜けて走り出した。
まっすぐ続く街路樹。
ギラギラ輝く太陽。
むわっとする暑さ。
夏を謳歌するセミの声。
一気に汗が吹き出してくる。
アスファルトの照り返しが眩しくて、目を細めた。
…あっ!
街路樹を仰ぎ見る人影。
見つけた!
あれは、上原くんだ。
私はホッとして、走るのをやめた。
緑に囲まれた道で、時々立ち止まりながら、花を見たり、葉を触ったりしている。
野良猫に話しかけたり、鳥のさえずりに耳を傾けながら歩いていく。
そんな上原くんの姿を、ずっと眺めていたくて、私は声をかけられないでいた。