「1495日の初恋」

妄想は膨らむ


「ねえ、海行かない?」

綾香が言った。
図書館の自習室。

みんなの目が、一斉にこちらを向いた。

「声、大っきいよ。」

すいませんと、頭を下げる。

口に人差し指を立てながら、美紀が小声で綾香に聞いた。


「なんで海なの?」


「だから…やっぱり、初めてのキスは海がいい!」



再び周りが、こちらを向く。


「だから、声が大っきいって。すいません、すいません。」

美紀が代わりに、頭を下げる。


「もう、その話は後でね。」

私たちは、気もそぞろに問題集に向かう。




キスかぁ。


上原くんと綾香のキス?

隣で問題集に向かう綾香を見た。


目を閉じる綾香。

そこに、漫画やドラマで見たように、上原くんが唇を近づけていく…。

私はギュッと目をつぶる。


ないない。

そんなこと、あり得ない。



…でも…

綾香に迫られたら、きっと上原くんだって…。

はぁ…。
口を開けば、ため息しか出なかった。


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