「1495日の初恋」
「日記もこれで書いたし、結に宛てた手紙も書いたことあるよ。」
「手紙?」
「そう…会いたくてどうしようもないときは、そうして心を鎮めてた。」
「…その手紙、くれないの?」
「あげるわけないでしょ。…ていうか、もうとっくにあげていたりもする。」
「えっ?何それ?私、何にももらっていないよ。」
上原くんは、ちょっと考えてから、思い出すように話しはじめた。
「…俺が、中学の卒業式前にあげたもの、覚えてる?」
「うん、あの落書きいっぱいの教科書…だよね?」
「そうだよ。」
「えっ?だから何?」
「なんでもねーよ、相変わらずうるさいなー、結は。」
「ちょっと何?何?教えてよ~!」
「もういいんだよ、あれは。」
上原くんは、半分笑いながら、恥ずかしそうに頭を掻いた。
教科書…?
もらった日から毎日眺めていたけれど、手紙なんか挟まってなかったなあ…。
「まあとにかく…俺はこの万年筆にずっと助けられていたんだよ。」
と、嬉しそうに話してくれた。
「結は、俺の近くにずっといてくれてたんだな…。」
上原くんは、私の頭を抱き寄せる。
「…ここ、お店の中だよ…恥かしいよ…。」
「…じゃ、こうするから…。」
そう囁くように言ってから、トレーで隠してそっとキスをした。