「1495日の初恋」
私の打ったサーブは、矢のように速い球で返ってくる。
ポーン…ビュッ!
ポーン…ビュッ!
体育館に響く音は、ずっと同じ。
上原くんが、ラケットを振れば得点が入る。
サーブは、早くて見えない。
当然、打ち返せるわけがない。
強烈なスマッシュが、身体に当たる。
避けることさえできない。
硬い石を投げつけられたように、ズシンと痛む。
上原くんは「大丈夫か?」と心配したが、私は「大丈夫だ」と立ち上がる。
悔しいけれど、全く歯が立たない。
グリップをギュッと握りしめる。
額の汗を手の甲で拭った。
「タイムアウト」
見兼ねた由里子さんが、私を呼んだ。
「海斗くんは、ここのコースが弱くて…。」
点など取れるわけがない、そんなことみんなわかってる。
だけど、無謀な挑戦をする私に、懸命にアドバイスをしてくれた。
宇佐見くんも亜紀もああだこうだと、必死で考えてくれる。
みんなが私に点を取らせたいと願っている。
上原くんにバドミントンを続けさせたい。
みんなの願いを背負って、私はもう一度コートに立つ。