「1495日の初恋」
私は、ためらいがちに頷いた。
断ることなんかできなかった。
宇佐見くんが、私の前にゆっくりと近づいてくる。
正面に立つと、もう一度穏やかな声で私に聞いた。
「あなたを、抱きしめて…いいですか?」
褐色の瞳が大きく揺れている。
「ん…。」
その瞬間、強く強く抱きしめられた。
「ずっと…ちゃんとね…こうしてみたかったんだ…。」
「宇佐見くん…。」
「上原さんは、俺の初恋だった。幸せになってね…さようなら。」
ふっと体が軽くなる。
宇佐見くんは、走って屋上から出ていった。
残された私は、あまりの突然の別れに、ただただそこに立ち尽くしていた。