「1495日の初恋」
「懐かしいね…これ…。」
席が隣だった時、よくこうして上原くんが描いた漫画を見せてもらっていたっけ。
「それだけ。」
「えっ?」
「教科書、もういらないんだ。それが俺のケジメ。」
「…意味が分かんないよ。」
「いいんだよ、結はわかんなくて。」
上原くんは、綿菓子のように柔らかな笑顔で立っている。
足元に咲くパンジーのように、優しく揺れる瞳。
「じゃ、俺、行くから。気をつけて帰れよ。」
あっ、と思ったときには、もう行ってしまった後だった。
手の中にある教科書。
もう一度開いてみれば、上原くんとの思い出がいっぱい詰まっていた。
パラパラ漫画や、先生の悪口なんかを筆談したあと、作者の顔に落書きしたあとや、絵のしりとりをしたあと。
それに、あの「やきもち」の絵もあった。