「1495日の初恋」

想いの紐をほどくとき




あの日、上原くんからもらった教科書は、今も変わらずここにある。


何度めくっても、手紙のような文面は見つからない。



文化祭の借りが、この教科書…。

そう言えば、文化祭のころって、何の勉強していたっけ…。



たしか、2学期だよね…。


井上ひさし…浅田次郎…森鴎外…魯迅…あ、ここだ…松尾芭蕉「奥の細道」


私は、教科書をめくっていた手を止める。


「 月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり…。」



古典かあ…。

古典は、覚えることが多くて苦戦したな…。


上原くんの教科書にも、苦戦の跡が見える。

線を引いて、隣に現代語訳が書いてあったり、昔の言葉を今の言葉に直してあったり。

赤ペンやら、蛍光ペンやら、教科書が派手派手だ。



不意に自分の教科書も見たくなって、上原くんのと同じページを開いてみる。












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