「1495日の初恋」
2冊の教科書を順に目で追いながら、懐かしい時間を思い出していた。
…上原くん、まじめに勉強してたみたい。
ちゃんと私と同じだし…って思ったけれど、あれ?ちょっと違う。
何だろうこの〇印?
私の教科書には、そんな印はついていないし、先生も〇をつけろなんて、言っていなかったような気がするんだけど…?
その先の数ページまでペラペラとめくると、やっぱり同じように〇がある。
上原くんの教科書には、1ページに一つずつ、文字に〇がついていた。
なんとなく、〇の付いた文字を、目で追っていく。
最初は…「ゆ」?
次のページは「い」?
「ゆ…い」?
心臓が大きく音を立てた。
指先が震えて、うまくページがめくれない。
急いで目で追えば、また「ゆ」に〇がついている。
次は「い」に。
その次も「ゆ」
その次は「い」
「ゆい、ゆい、ゆい…」
何度も何度も、教科書が…上原くんが、私の名前を呼んでいる。