「1495日の初恋」
あの頃の上原くんの気持ちが知りたい。
震える指で、教科書をめくれば、
「五月雨の降りのこしてや光堂」
という俳句にも、大きく〇がついていた。
これは…?
私は、隣に書かれた手書きの現代語訳に目を通す。
「あたりの建物が、雨風で朽ちていく中で、光堂だけが昔のままに輝いている。
まるで、光堂にだけは、五月雨も降り残しているようなことではないか。」
光堂だけは、何があっても変わらないということ…。
上原くんの現代語訳には、まだ続きがあった。
「…俺も変わらない。」と、最後に小さく書かれている。
俺も変わらない…?
変わらない…。
ああ、あの日、ボタンをつけながら、そんな話をしたかもしれない。
変わらない気持ちの話を。