「1495日の初恋」




「俺…何言ってんだろ…。結が、バカなこと聞くからだからな。」


「バカなことってなによ。」


「好きになるってどういうことかだなんて、俺に聞くな。」


上原くんは、真っ赤になった自分の耳を、ぐいぐい引っ張りながら言う。


「えっ、もう聞いちゃったもん。好きになったら、名前を何度も呼んでくれるんでしょ?」


「…結っ!綾香に余計なこと言ったら、マジで怒るからな。」


「ふふふ。」


「笑うな。」


「へへへ。」


「ほら、笑ってないで、手を動かせ。」


はにかんだ笑顔を見せる上原くんに、胸がキュッとなった。



私もね、心の中で、何度も何度も上原くんって呼んでいるんだよ。

だから、よく分かる。


あなたが好きな人を知りたいって思うことも。

好きな人の名前を呼びたいって思うことも。


よく、分かるよ…。








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