「1495日の初恋」
上原くんの気持ちが分かった今、あのときの「借り」をちゃんと返したい。
気付くまでに、こんなに時間がかかったけれど、あの場所でちゃんと好きって言えていたら、上原くんに「借り」を返すことができるんじゃないか。
そう思うと、私はいてもたってもいられなくなり、家を出た。
夕焼けを背負って、勢いよく走り出す。
目指すはあの日、この教科書を受け取った場所。
上原くんの気持ちが、あの場所で待っている。
風が、私の背中を押すように吹き抜けていく。
教科書を握る手に力がこもる。
一歩一歩、中学に近付くにつれて、私の気持ちもあの頃に戻っていく。
確かこのあたりに…あった!
破れたフェンスが秘密の出入り口。
遅刻しそうなときは、ここから入ると近道だった。
あの頃のように、身体を屈めて学校に入ると、懐かしさに胸がいっぱいになった。