「1495日の初恋」
プールの角を曲がると、あの日の匂いがした。
名前は…?
あれからここに来たのは初めてで、もうだいぶ経っているから、鉛筆で書かれた文字などあるわけないと思いつつも、探してしまう。
壁の上の方から、徐々に視線を走らせていく。
そして、その事実に、一瞬目を疑った。
あっ…た…
消えかかっていたけれど、マジックで書かれた6人の名前。
これ、綾香の字だ…。
来てたんだ…綾香も、ここに。
なんだか、それだけで胸がいっぱいで、たまらなくなる。
あの時の私たちの思い出を、必死で守ってくれている綾香を思うと、胸がキュッと苦しくなった。
上原くんだけじゃない。
みんなの想いが、ここには残っている。
あの時、私たちは、確かにここに存在していた。