「1495日の初恋」
風が吹いている。
上原くんの前髪を、優しく揺らしていた風。
あの日、上原くんの足元のパンジーが、頷くように揺れていた。
目を閉じて、綿菓子のように柔らかな笑顔でそこに立つ、あの日の上原くんを想う。
私は携帯を取り出すと、上原くんに電話をかけた。
何回目かのコールの後、「結?どうした?」と、上原くんの声が聞こえた。
自分から電話をしたくせに、繋がったことに驚いてしまう。
高校は携帯禁止のはず。
それなのに、なんで電話に出てくれたの?
「上原くんこそ、なんで、電話、出るの?」
「ああ…それはこっちのセリフだよ。俺だってびっくりした。今日は突然、半日ほど時間ができて、後輩と買い出しに来てたんだ…今やっと終わって、寮に戻る前に、俺も今、結に電話しようと思ってたとこ。」