「1495日の初恋」




それは、恋の歌だった。

優しい声と切ない歌詞が、キュッと心に響いてくる。





…………



宇佐見くんは、私の前に楽譜を広げた。


ああこれは、さっき歌っていた曲…。

私は、鍵盤に両手を置いて、一呼吸。



楽譜を読んで、ゆっくりと弾きはじめた。

宇佐見くんは、私の後ろから鍵盤に手を伸ばして、同じように弾きはじめる。


私が身体を斜めにして後ろを振り向くと、うんと頷いて微笑んでくれた。



そして、さっきよりも優しい声で歌い始める。


あたたかな優しい声。



私は鍵盤から手を下ろし、後ろを向いて宇佐見くんを見た。


宇佐見くんは、口角を少し上げて目を伏せた。


手は、私の後ろから伸びている。




私の身体は、宇佐見くんの腕に囲まれていた。






< 369 / 388 >

この作品をシェア

pagetop