「1495日の初恋」
「大丈夫なわけないよ。」
「本当に大丈夫だって。」
イラついた俺は、亜紀に強くあたった。
なんで、上原さんじゃないんだよ…。
額に乗せられたタオルを外して、目をギュッと強く瞑る。
もう、上原さんは見えなかった。
歯を強く噛み締め、こみ上げる何かをぐっと堪えた。
額にまた、冷たい感触。
亜紀が、タオルを乗せながらつぶやいた。
「さっき…結の名前を呼んでたよ。」
握られた手を振りほどこうとして、もっと強く握られる。
「その話はやめろ。」
俺は強く目をつぶり、空いている手で耳を塞いだ。
「カズは、結が好きなんでしょ?」
俺は、目を閉じたまま答えない。
「私は…。」
そう聞こえた瞬間、ギュッと閉じた俺の唇にふわりと温かな感触。
驚いて目を開ければ、ほんの少しだけ触れて、そっと離れていった。
「カズが好きだよ。」