「1495日の初恋」
「ごめん…。」
他に何と言っていいのかわからない。
亜紀は手で顔を覆ったまま、首を横に振った。
「分かってる。私こそごめん。」
「亜紀…。」
しばらくの間そうしたのち、亜紀は両手で顔を拭って、自分で頬をパンパンと叩いた。
「ああ、スッキリした。もう大丈夫だよ。」
そう言って、泣いてるくせに笑顔を作る。
「カズ…結は、ここに来るよ…あの子は優しいから、カズを心配してここに来ると思う…。そしたら、さっき私がしたみたいに…キス…しちゃいなよ。奪い取っちゃえっ!」
亜紀は、一際大きく笑顔を作りながら、俺の前髪に触れた。
「よし、完璧。かっこいい!じゃあ、私はそろそろ行くね。」
そうして、俺に背中を向けてここを出ようとする。
俺は、亜紀の背中に向かって吐き捨てるように言った。
「来ないよ、上原さんは。来るわけないじゃないか。」