「1495日の初恋」
身代わりのキス
亜紀は、俺の顔の両側にあった手を離して、そっと立ち上がる。
「引き止めてくれて嬉しかったよ。でも、カズと結がキスしてるとこは、さすがに見られないから、もう行くね。頑張ってね。」
そして亜紀が、少し歩いて立ち止まり、振り返って発した言葉。
それはまるで、俺自身から出た言葉のようだった。
「カズの中の0.1パーセントぐらいは、私の入る隙間はあるのかな…なんてね。それじゃ、行くね。」
亜紀の言葉は、俺を映す鏡だった。
自分の傷を見ているようで、叫びたくなるほど心が痛かった。
俺が亜紀を好きになることができたら、誰も悲しまないですむのかもしれない。
同じ傷はもう見たくない。