「1495日の初恋」
後戻りはできない
私は、みんなより先に帰ることになった。
フラつく私を、矢島くんが手を伸ばして、抱きとめてくれた。
正面にいた上原くんと、目があった。
あっ…と思ったけれど、どうにもできない。
ガサガサした気持ち。
早くこの場から立ち去りたい。
「矢島、ちゃんと送ってけよ。」
上原くんの声。
私は、そろそろと歩き出した。
矢島くんにもたれかかるようにして、駅まで歩いた。
海でのことが尾を引いて、なんとなく気まずい。
話す言葉も見つからない。
それでも、私を気遣ってくれているのは、触れた腕から伝わってくる。
電車に乗ると、私は目を閉じた。
遠くなる意識。
「今日は、ごめんね…。」
矢島くんの声が、微かに聞こえた。