「1495日の初恋」
駅に着くと、辺り一面がオレンジ色に染まっていた。
街路樹の葉が、風で揺れている。
セミは、今日の日を惜しむように鳴き続けていた。
矢島くんと並んで歩く。
「今日はごめんね。」
そう謝る私に、俺の方こそごめんと、頭を下げた。
「ううん。」
悪いのは私だ。
謝るのは私の方。
上原くんへの気持ちを抱えたまま、矢島くんと付き合っていくことはできない。
「ねえ、矢島くん…。」
きちんと、言おう。
私が顔を上げて話しかけたと同時に…抱きしめられた。
「上原さん…好きだから…ずっと…好きだから…。」
息もできないくらいに抱きしめられ、私は何も言えなかった。
言葉にできない気持ちが溢れて、涙に変わる。
矢島くんは、私の涙の理由も聞かずに、黙ってずっと抱いていてくれた。
苦しいよ。
…私は最低だ。
その夜、綾香からメールが来た。
「上原とファーストキス達成!」
もう涙は出なかった。