「1495日の初恋」
もっとそばに
私は最初、遠慮がちに接していた。
足首も緩く結び、身体も触れないように距離をとっていた。
練習を始めて三日目。
上原くんが、練習をやめると言い出した。
「お前さ、どうせ勝つ気ないんだろ?」
「え?勝ちたいよ、そりゃ…。」
上原くんの顔、怖い顔。
ものすごく怒ってる。
「やる気ないなら、やめちまえよ!」
「…やる気はあるよ、でも…。」
「だったら、もっとこっちに来いよ!」
そういって、肩をぐいっと引き寄せられた。
ビクッと身体が跳ねた。
ぎゅっと心臓を掴まれて、動けない。
汗の匂いがする。
男子の…匂い…。
横、向けない。
上原くんの手と、私の肩の間には、体操着一枚しかない。
五本の指の、一つ一つの温かさまで感じる。
閉じていた気持ちの箱から、キュンが飛び出して、身体中を埋め尽くしていった。