「1495日の初恋」
上原くんのおかげで、衣装は見事に完成し、無事に本番を迎えることができた。
私たちの劇は大絶賛され、たくさんの人に褒めてもらえた。
劇に関わったみんなが、それぞれ自分の持てる力を全部出し切った。
爽快感と感謝。
協力してやり切る楽しさ。
困難を乗り越えて、創り出す喜び。
自分を精一杯表現することが出来たという、ありがたい気持ちでいっぱいだった。
たくさんのことを学んだ文化祭も、こうして幕を閉じた。
私の中で、一生忘れられない思い出になった。
あの日、私のうちまで黙って送ってくれた上原くん。
帰り際に上原くんが言った。
「結、貸し1つだからな。ちゃんと覚えておけよ。」
「何?漫画でも買えばいいわけ?」
「ばーか、そんなのいらねーよ。じゃあな!」
そうして、走っていってしまった。
なんだったんだろう、あれ。
自分の腕を摩りながら考える。
…貸し一つか…。
季節は、冬になろうとしていた。
中学3年生でいられるのも、あと4か月ほどだった。