微熱37℃





正直、雅人さんも千さんの事もあまり記憶に残っていない。


潤覚(ウルオボ)えというやつだ。



「いや~長旅で疲れただろう。母ちゃん部屋に案内してやんな」


「はいはい。
サクヤちゃんこっちだよ」



雅人さんに軽く頭を下げ、千さんの後を付いて行った。


階段を上がり、上がった左側二番目の部屋。



「此処がサクヤちゃんのお部屋。好きに使っていいからね」



千さんに案内された部屋は和室。襖を開けた瞬間、フワッと畳みのいい匂いがした。



「こんな立派な部屋、私が使っていいんですか?」


「全然構わないわよ。

ずっと絞めっきりだったから少しカビ臭いわね」



そう言いながらガチャガチャと窓を開ける。


…多分盾突けが悪いのだと思う。



< 6 / 28 >

この作品をシェア

pagetop