微熱37℃
正直、雅人さんも千さんの事もあまり記憶に残っていない。
潤覚(ウルオボ)えというやつだ。
「いや~長旅で疲れただろう。母ちゃん部屋に案内してやんな」
「はいはい。
サクヤちゃんこっちだよ」
雅人さんに軽く頭を下げ、千さんの後を付いて行った。
階段を上がり、上がった左側二番目の部屋。
「此処がサクヤちゃんのお部屋。好きに使っていいからね」
千さんに案内された部屋は和室。襖を開けた瞬間、フワッと畳みのいい匂いがした。
「こんな立派な部屋、私が使っていいんですか?」
「全然構わないわよ。
ずっと絞めっきりだったから少しカビ臭いわね」
そう言いながらガチャガチャと窓を開ける。
…多分盾突けが悪いのだと思う。