House
「……あづちゃん?」
はっと、我に返った。
「もう、急にどーしたの?」
「ごめんなさい……なんだかボーっとしてたみたい」
何も無かったかの様に、再び夕食を口にする。
「そお?病気じゃないならいいけど…」
まあ、失礼なこと。
「って言うか
このシチュー、デリシャス♡」
…うん、それは認める。
今まで食べて来たクリームシチューより、格別に美味しい。
「俺の腕にかかれば、こんなもん、ちょちょいのちょいだぜ!」
「もー、あさたんったら〜」
麻人が作る料理はどれも、お店で食べる料理並に美味しい。
ちょっとしたジョークで、雰囲気を明るくできるところも、麻人のいいところ…?
「そう言えばね…明日から3日間、お仕事で帰れそうにないの」
リンさんが申し訳なさそうにしている。
「いえ、仕方ないですよ…頑張ってくださいね!」
そう、リンさんはモデルのお仕事をしている。
一応リンさんは美男子なんだけど…
「ありがとうっ!あづちゃんは話が分かる子ね♡」
完璧のホモです。
ま、ここのムードメーカーはリンさんで間違いはない。
「大丈夫、この家は俺に任せなっ!」
いつになく、熱い麻人。
「あさたん、本気で言ってるの?」
「おうよっ!」
「……無理でしょ」
おっと、口がすべった。こう言う事、よくあるよね〜…
「…あ″?」
「いや、違います!何も言ってませんよ〜」
「ならよし」
この熱血バカは、どうにかならないものか…
ちょっと前までは、『世界制覇!!』とか言ってた奴だからね。
いや、今もか。
ーバタンッ
「あ、りょうちゃんお帰り♡」
「ただいま…です」
帰って来たのは、涼太くん。
塾に行っていたみたいだ。
「おい、涼太。飯は?」
しゃもじを涼太くんに向ける麻人。
「いりません…」
なんだか元気が無いようにも感じる。
「てめー、俺が作った飯を食わねえ気か?」
「…あさたん」
リンさんが止めてくれた。
やっぱり何か感じているのだろう…
「僕、もう寝ます…」
「涼太くん、無理しないでね」
涼太くんは私を見て、一礼をして階段を上って行った。
「何なんだよあいつ…」
「あさたん、無理に責めないでちょーだい」
やっぱり、何か事情があるんだろうな。