House
どれも、これも楽しい思い出だなあ〜。
「そんな事があったんですね…」
「でも、リンさん。話は終ってないですよね?」
あづちゃんは、鋭い子ね。…確かに、話はここで終わらない。
「まあ、それからは……お分かりの通り私も家を出て、同じシェアハウスに住む事になったのね。
でも、その時の人達は大人になってほとんど自立しちゃったんだけど、佳君と私と郁子さんだけは残ったの」
そう…。
それで、郁子さんが今のシェアハウスのリーダー的存在なんだけど…
「でも、佳君が外国に行く事になってシェアハウスを卒業しちゃったし、郁子さんは郁子さんで、行方不明になるし…
本当、当時は散々だったわ」
笑っちゃうわね。
結局、残ったのは私だけなんて…
「それで、今のメンバーが入って来たって訳ですね〜。でも、佳さんは外国に行っちゃったんですね…」
そう…元々、分かりきってたのよ。
私の恋は叶うわけないって。
私がいくら愛しても、彼は所詮男の子。女の子を好きになるのが普通だわ。
「リンさん…」
同情の目で私を見るふうちゃん。
彼女も、きっと同じ経験を乗り越えて来たんだろう。
「…だけどね、勘違いしちゃだめよ?
私達は自分が、好き!って思った人だから、頑張ってアピールするの。両思いになる確率は、普通の人より何倍も低いけどね……
でも、それは間違った事じゃないと思うの。だって、人を愛せる心は人として素晴らしい事だわ」
私は、佳君に出会ったことで、『自分』を知れた。
ああ、やっぱり……私は男性が好きなんだなっ…て。
でも、これは変えられない事実。
それならもっと、オープンに生きるべきだと思うの。
だから、モデルなんて職業をやってるのよ。
他の子になんか、負けない。
「リンさん……リンさんはやっぱり、私の憧れです!!」
ふうちゃん、あなたもきっと分かる時が来るわ。
「ふふっ…応援してる♡」