House
Side あづさ
水着、着てみたのはいいけど…ね〜。
私……そうとうのカナヅチだよ??
「リンさん、やっぱり無理ですよお〜…」
「ふふふっ…じゃあ、教えてもらいなさいよ〜♪」
絶対、嫌。
リンさんがニヤニヤしてる……これは、なにか企んでる証拠。
「ほら、あさたんも呼んでるよ♡」
え。
川の方を見る。…すると麻人がこっちを向いて、私に「来い!」っと手招きしていた。
「はあ……じゃあ、行って来ます…」
大きな溜め息をして、川に近づく。
途中、おかしな事を言ってくるリンさんを睨みながら……
「おー、あづさ!」
川のすぐそばまで行くと、麻人が私の名前を呼んだ。
結構深い所まで行っていたみたいだけど、私の近くまで来てくれた。
「お前も入れよ!楽しいぜ〜」
さっきと全く違うテンションに、本当おかしくなった。
「私も入りたいけど…ね。やっぱりいいや〜」
「何だよ〜。あ、もしかして、お前カナヅチか??」
ニヤッとして私を見る。
…実際、その通りなんだけどね。
「いいじゃんよ〜、入れ入れ!溺れたら……そん時はそん時!!」
もう、なんだよ〜。
助けるとは言わないんだね…。
「でも……うわっ!!!」
ーバシャンッ…!
急に、麻人が私の腕を掴んで川に落とした。
「…っはあはあ……バカっ!!」
「へへっ」
何とか顔は水面上にある。
でも、結構深い所に落とされたみたいだ。…麻人が私の腕を掴んで無かったら、確実に溺れていただろう。
「……麻人、足着いてるの?」
「いや、着いてねーけど?」
え……嘘でしょ?
私は背が低いから、どうやってもここの地面に足は着かない。
だから、麻人に掴まって、なんとか麻人を頼りにしている訳だけど…
「…いやっ!流される!!……今すぐ、戻ろ!」
慌てる私とは真逆に麻人は笑っている。
「大丈夫!俺を信じろ!!」
いやいやいや……本当に怖いんだって。
小さい頃、お兄ちゃんによく連れて行かれた海で、同じような事をされてたんだ。
その時一瞬溺れかけて、それから泳げなくなっちゃって…
だから、地面に足が着かないと不安でしょうがない。
麻人の腕を掴む力が強まる。
そんな私に気付いたのか、麻人は「ちゃんと掴まってろ!」と言って、私の腕を自分の首にまわした。
麻人の肌に触れる…
いつも部屋にこもっているせいか、肌は白い。でも、分厚い筋肉があって、驚く程がっちりしている。
お兄ちゃんに触れたのは、今よりもっと子供だったけど、麻人の背中とお兄ちゃんの背中が重なって見えた。