House




Side あづさ


水着、着てみたのはいいけど…ね〜。


私……そうとうのカナヅチだよ??



「リンさん、やっぱり無理ですよお〜…」


「ふふふっ…じゃあ、教えてもらいなさいよ〜♪」


絶対、嫌。


リンさんがニヤニヤしてる……これは、なにか企んでる証拠。



「ほら、あさたんも呼んでるよ♡」



え。


川の方を見る。…すると麻人がこっちを向いて、私に「来い!」っと手招きしていた。



「はあ……じゃあ、行って来ます…」



大きな溜め息をして、川に近づく。


途中、おかしな事を言ってくるリンさんを睨みながら……



「おー、あづさ!」


川のすぐそばまで行くと、麻人が私の名前を呼んだ。


結構深い所まで行っていたみたいだけど、私の近くまで来てくれた。



「お前も入れよ!楽しいぜ〜」


さっきと全く違うテンションに、本当おかしくなった。


「私も入りたいけど…ね。やっぱりいいや〜」


「何だよ〜。あ、もしかして、お前カナヅチか??」


ニヤッとして私を見る。


…実際、その通りなんだけどね。



「いいじゃんよ〜、入れ入れ!溺れたら……そん時はそん時!!」



もう、なんだよ〜。


助けるとは言わないんだね…。



「でも……うわっ!!!」



ーバシャンッ…!


急に、麻人が私の腕を掴んで川に落とした。



「…っはあはあ……バカっ!!」


「へへっ」



何とか顔は水面上にある。


でも、結構深い所に落とされたみたいだ。…麻人が私の腕を掴んで無かったら、確実に溺れていただろう。



「……麻人、足着いてるの?」


「いや、着いてねーけど?」



え……嘘でしょ?


私は背が低いから、どうやってもここの地面に足は着かない。


だから、麻人に掴まって、なんとか麻人を頼りにしている訳だけど…



「…いやっ!流される!!……今すぐ、戻ろ!」



慌てる私とは真逆に麻人は笑っている。



「大丈夫!俺を信じろ!!」



いやいやいや……本当に怖いんだって。


小さい頃、お兄ちゃんによく連れて行かれた海で、同じような事をされてたんだ。


その時一瞬溺れかけて、それから泳げなくなっちゃって…



だから、地面に足が着かないと不安でしょうがない。



麻人の腕を掴む力が強まる。


そんな私に気付いたのか、麻人は「ちゃんと掴まってろ!」と言って、私の腕を自分の首にまわした。



麻人の肌に触れる…



いつも部屋にこもっているせいか、肌は白い。でも、分厚い筋肉があって、驚く程がっちりしている。



お兄ちゃんに触れたのは、今よりもっと子供だったけど、麻人の背中とお兄ちゃんの背中が重なって見えた。


< 31 / 49 >

この作品をシェア

pagetop