House
Side 麻人
「あっ、魚!」
俺があづさを岩の上に降ろすと、また笑顔を取り戻した。
…と言うより、そこからの眺めがいいのか、目を輝かせて川の中の生き物を見ている。
「あづささん!」
俺らの元にやって来たのは涼太だった。
「涼太君、どうしたの?」
首を傾げるあづさに、ニコッと笑って返す涼太。
「もうすぐ、お肉焼けるので行きましょう」
どうやら、昼飯が出来たらしい。
珍しく川に夢中だった俺は、料理の事なんて完璧に忘れていた。
「本当?行く行く♪…麻人もおいでよ〜」
その瞬間、ハッとした……涼太が俺をじっと見ていたんだ。
それも、凄く寂しそうな目で。
「…涼太?」
名前を呼ぶと我に返ったのか、涼太は俺から目を逸らした。
何なんだ?この空気は…
「おーい……何してるの?」
この空気に気付いたのか、突っ立ったままの俺をあづさは不思議そうに見ていた。
「いや、何でもねー…お前ら先行ってろ」
そう言って俺は、また川に潜った。
そりゃあ、あんな目されたら苛々するし…
考え過ぎだな、俺。