House
それから、また何週間が過ぎて、母さんの病院を訪ねる事にした。
なぜ行く気になったのか、僕にも分からなかった。
「奥田由紀子さんは205号室ですね」
途中、来た事に後悔した。
「205号室…」
案外、あっさり部屋を見つけドアの前に立つ。
そこからの一歩が、なかなか踏み出せないでいた。
「あの…もしかして奥田さんのご家族ですか?」
振り向くと、そこには、白衣を来た中年の男性がいた。
「あ…はい、一応」
「そうですか……1つお伺いしても宜しいですか?」
何を聞かれるのか、少しハラハラした。
「実は、由紀子さん、手術を断っているのですよ。それも、お金の問題で」
お金?
そんな話聞いた事も無かった。
「手術さえすれば、助かるのですが…」
お金…か。
僕には稼ぐ場所がない。
もちろん、収入もあるはずがない。
「…わかりました」
何がわかったと言うのか?
僕は母さんが嫌いなんだ!…それなのに。
助けたい。
それから僕は、盗みでも何でもやった。お金に変わるなら必死になって務めた。
いつの間にか、それが僕の全てとなっていた。