サクセスラブを この手に
フィアンセの幸二さんの前だとこうはいかない。

立ち振る舞いや礼儀や言葉に気を使った。

あちらの家柄が一般的でなく

少し上流家庭だから仕方がないことだと思っていたので

今のように自然体で外食を楽しむことは一度もなかった。

これからもないかもしれない。

「舞?バニラのお代わりは?」

「ううん、もう充分です。」

「そう。君と食事ができて楽しかった。いつもは渋い顔をしたお偉いさんが相手だからつまらない。せっかくの料理が台無しなんだ。」

彼はジャスミン茶を飲みながら私に笑いかけた。

私はそういう彼が少し可哀相に思えた。

仕事とはいえ食事くらい楽しく食べたいと誰もが思うわ。

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