クリスマス残夢
自分の左手に触れてみた。
薬指に結婚指輪はない。
喧嘩して外したのではなく、失くしたのだ。
上の子が生まれて間も無く、手荒れに悩まされるようになった。とくに薬指に付けっ放しの結婚指輪の周辺が酷かったから、指輪を付けたり外したりを繰り返した。
そうしていたら、いつの間にか失くしてしまっていた。
心当たりを探し回ったけど見つからず、あなたに言うのがためらわれて、悩んだ末に打ち明けたのは数ヶ月後。
あなたは私を責めることもなく、
「失くしたものは仕方ない」
と、ただ一言。
抑揚のない淡々とした声で。
その後、手荒れは治ったけど指輪は戻らない。職場の人の結婚話を聞くたびに、自分の薬指を見るたびに、寂しさを感じた。
あなたと喧嘩するたびに、指輪があれば変われるのかと思った。
もう一度、やり直せるかな。
昔のように戻れるかな。