ある日、いじめが始まった。
「あ〜私、集団っていうのが嫌いなんよね。集団で動くくらいなら一人の方が楽だなーって」
堺さんは額に伝う汗をタオルで拭きながら答えた。
「そ……そうなんじゃ……」
集団が嫌い、………か。
何でそんな風に思えるんだろう。
何でそんな考えができるんだろう。
私は、一人が怖い。
一人になったときの孤独感がたまらなく嫌で嫌で、苦しい。
だからランニングの時だって誰かと一緒に走ろうと思ったし、今だって一人が嫌だからこうやって堺さんの隣にいる。
こんな考え方ができるようになったら私も少しは楽になるかもしれないのになぁ……
「川原さんは?」
「へっ?」
唐突に声をかけられたので素っ頓狂な声を出してしまう。
「川原さんは中に入らないん?」
堺さんは真っ直ぐ私を見て言う。
「わ、私は……」
……私は体育館の中に入りたかった。
でも、誰も卓球する人がいないから、
皆の中に馴染めてないから……
今、ここにいる。
堺さんとは考えも思いも違いすぎるよ…
「私は皆の中に上手く馴染めんで、卓球する相手もおらんけん……。体育館の中入って皆に迷惑がられるくらいなら外でのんびり過ごした方がいいなって。
…堺さんが羨ましい。私もそんな考え方ができたらな」