ある日、いじめが始まった。



「ラッキー!」


「先輩、ナイスサーブです!」






体育館全体に私達の声援が鳴り響く。


先輩達の引退試合はとある市民体育館で行われた。




私達1年生、そして2年生の数名は観客席から試合に出ている2、3年生の応援をしている。


原則として試合に出ない人も応援に行かければならないからだ。






「先輩、ナイスサーブです!」





私は皆の塊から少し外れた所で応援をする。



でも、寂しくはない。






「今の先輩のスマッシュすごかったね!」






なぜなら今日は隣にみっちゃんがいたから。






結局、夏休みに入ってから今日までみっちゃんは部活を何度も休んでいる。


だから……もしかしたら今日の応援も来ないんじゃないか、と思ってた。




みっちゃんがいなかったら私は一人。


丸一日部活のメンバーと過ごさなければならない日にずっと一人でいることになる。



正直、それは辛い。






けど今日みっちゃんは来てくれた。


今日の”みっちゃん”という存在はいつもに増して私の心を大分救ってくれたように思う。






「次は12コートで試合だって!千秋ちゃん移動しよー」



「うん!」





私はみっちゃんの後を追っていく。






いくら皆の塊と離れていようが関係ない。


一人と二人は全然違う。




たった一人でも自分の側にいてくれる人がいるだけで充分満足しているから。









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