ことば紡ぎ
「なんだお前、アホウドリを見る様な目をして。」
「どんな目だよ。」

裕司は、そのまま話を続ける。

「まあ、あれだよな。あの子のどこが良いわけ?いっちゃ悪いけど、確かに見ようによっては、可愛いけどそれでも、中ぐらいじゃん。おまけにあの毒舌だぜ。正直選ばないだろ。」
「ぜんぶ」
「…お前、そろそろどん引くぞ。」

その言葉を聞かずに、颯太は気持ち悪く顔を緩ませ、しゃべりだす。。

「まあ、強いて言うなら、意外と優しい所とー、あと!忘れてはいけないのが!言葉だよ!」
「言葉?言葉が優しいのか?
よくわかんねーけど、さっきの会話のどこがだよ。」

裕司は、意味がわからない、というように首をかしげる。
その様子を見て、颯太は、はぁーとわざとらしく大きな溜息をつく。

「まったく、これだからなっていないね。あの良さが分からないなんて。それに、優しさっていうのは、目で見えるものじゃないんだよ。」
「ふーん。」
「それに、お前だって人のこと言えねーだろ?人は、見かけによらないんだよ。」

図星のため、言い返す言葉がない。
裕司は、何かとトラブルの多いやつなのだ。
容姿が整っているのもその要因だろうが、それに加えかなり女運がなく。
大体、彼は付き合うと泥沼化し、結局二股の浮気の方であった、というオチだ。
彼が悪者にされるというオプション付きで。
そのため、悪い奴ではないのに友人の数がそう多くないのである。

「どうでもいいけど、お前のそのドヤ顔うぜぇ。」
「何を言うか!俺の渾身のドヤ顔を!」

颯太は、胸を沿って威張るように、鼻から息を大きく吐く。
この馬鹿で、鬱陶しい友人が幸せになってくれると嬉しいなと思うが、言わないのが、裕司なのだ。
そして、裕司は笑いながら颯太の肩をつかむ。

「まあ、なんだ、取り敢えずもう少し人目の少ないところで、告白したらどうだ。」
「んー、それもそうか。」

颯太と裕司は自分の教室に入り、それと同時に昼休憩の終わりを告げるチャイムが響いた。
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