Your smile once again
『洸』



鈴を転がしたみたいな、高く子供っぽい声。

俺の手は、佐々木の頬に触れる寸前で止まった。

「ーーーッ」


やめろ……。来るな……。

『好きなの』

捨てたんだ……。
思い出したく無いんだ!


『洸には友達がいるでしょう?』


消えろ、消えろ、消えろ消えろ消えろ!!

『私には洸しかいないの』

クシャッてなる、笑顔。

佐々木とは正反対だ。



『でも、洸がいればいい。洸しかいらないの』


あの日、顔をぐちゃぐちゃにして泣いた彼女。


『洸は、私を捨てるの?』



その目が俺を睨んだ。俺は恐怖を感じた。

「やめてくれ……」

手のひらで自分の目を覆い、視界を遮断する。

そうしないと、壊れてしまいそうだった。


『私は、人に触れるのが怖い。

 それは、肌もだけど心に』


佐々木が、一年の時に言った言葉を思い出した。


あの時の横顔ほど悲しそうな佐々木の顔を、見たことはない。


同じなんだ。

俺だって怖い。
佐々木は大切なものを何かに奪われたかもしれないけど、俺も同じなんだ。


阻まれて、


壊されて、


奪われて、


何もなくなった。
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