Your smile once again
戸部先生が驚いて手を止めた。


「知らなかったのか?

下駄箱の手紙、教科書の落書き。


あと、なにがあったかな」
「知らない……」

俺は顔を歪めた。


俺は佐々木の事を、何も知らなかったんだ。

そう思うとひどく悲しくなる。

知りたい。
佐々木を。

「あのっ!心臓って何の事ですか? それに、呼吸もおかしいみたいだし……」


戸部先生は黙って、タバコの煙を吐き出した。

校内禁煙じゃなかったけ?

「母親譲りでな、元々心臓は強くないんだよ。

まぁ色々あったから。
すぐ過呼吸になるようになったんだ。

 ストレスとか、色々だ」


「先生は、佐々木の過去を知ってるんですか」

俺は拳を握りしめた。

分かるかもしれない。

佐々木の、抱えているものを。


「……一応な。
 俺より海翔……、弟の方が詳しいけどな」


俺が何も言えないでいると、戸部先生がまっすぐに俺を見た。
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